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「遊びの本質」を理解すると、これからの教育と働き方が見えてくる

更新日:2018年5月5日



みなさんは最近、遊んでます?



最近読書をしていると偶然にも遊びの大切さを説く本にあたることが多く、読むたびに「ちゃんといろんな遊びをしているか。おい!」と投げかけれてるように感じて一人でびくっとしていました(笑)



ワークショップでは真剣に楽しむこと(Serious Fun)の大切さをお伝えしたり、楽しさと真面目は同居してはいけないような風潮があるようにも思え、意識的に研修では「真面目と楽しさの両立」とその有効性をお話してます。



しかし、忙しくなるとどうしても時間に余裕がなくなり、遊ぶという感覚を忘れがちですよね。



技術革新や働き方に関する情報を各所でキャッチしているなかで、ふと思ったことが「これからは遊びの概念自体も、変わらなければならないのではないか?」ということでした。


今回は私の得意分野である教育・発達分野も絡めつつ、遊びの必要性について、考えてみたいと思います。



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遊びの本質とは?フロー状態と創造性の関係



まず、遊びの本質について考えてみましょう。


遊びとはその行為自体が目的になっているというのが特徴です。何かのために遊ぶのではなく遊びたいから遊ぶ。単純明快です。


ボール投げ、トランプ、凧あげ、鬼ごっこ…これらはそれ自体が何かにつながるものではありません。


遊びと仕事を比較すると分かりますが、仕事は多くは生活のためや何か欲しいものを得ることを目的に行っていると思います。


つまり内発的動機から行為自体に没頭し、集中している状態が遊びといえます。


子どもの頃にあった、時間を忘れて友達と遊び、気づいたら門限を過ぎているということを思い出される方もいるのではないでしょうか。


また、遊びに近いものでいえばギャンブルも入りますが、これはお金を得たいという目的でやっており、行為自体ではなくその先の外部から得られる報酬を期待しているため、ここでいう遊びからは外します。


この集中状態については、米国心理学者でポジティブ心理学の研究でも有名なミハイ・チクセントミハイ博士の代表的な研究・フロー体験に通じると考えられます。


フローは極限の集中状態であり、「気付けば数時間経過していた」と感じられる時間感覚を表します。アスリートが自身のパフォーマンスを振り返り「球が止まって見えた」といったゾーンという感覚も近いと思います。


フロー状態は人が幸福を感じる上でも大切な要素としてポジティブ心理学では紹介されていますが、まさに遊びはフローを伴う感覚。集中状態で行為自体を楽しむという体験は、人間の発達的観点からみても必要不可欠です。


最近の研究では、動物は遊びを通じて主要な認知スキルを発達させていることが分かったそうで、ハイイログマの生態を15年間研究してきたボブ・フェイガン博士は、よく遊ぶ熊ほど長生きすることを発見し、遊びを通して未知の課題や不確実な状況への対応力を身につけているのではないかと説明しています。


神経科学者のジャーク・パンクセップは、「たしかに言えるのは、遊んでいるときの動物たちが極めて柔軟で創造的な行動をとるということだ」と語っています。

(引用:エッセンシャル思考)


また、遊びは脳を刺激するともいわれ、新たなアイディアを生み出すなど創造性を高めるためにも重要です。


日々のストレスにより創造性をはじめとした認知機能は低下します。

しかし、仕事ができる人ほどよく遊ぶといいますが、そういった人は常に高い創造性が引き出されていると考えられます。何が創造性を高めるかを分かっていらっしゃるのだと思います。


遊びはフローという幸福を高める状態に導くだけでなく、人間も含めた動物たちの問題解決をはじめとする認知スキルの発達、脳を刺激し思考力や判断力、そして創造性を高めるといえます。




子どもたちの遊び経験がその後の人生を決める



よく「子どもは遊ぶのが仕事」といいますが、まさにそうだと考えます。


先述の遊びの本質と影響を踏まえると、子どもたちにとって遊びとはフロー体験と認知機能の発達の機会です。



1つ遊びのシチュエーションを挙げてみましょう。


小学生の子どもたちが集まって公園で遊ぶことになりました。特に何をするかは決めていません。クラスで声を掛けて集まれるメンバーで集まってからやることを決めます。

一人の子がゴミ箱にある空き缶を見つけ、「今日は缶蹴りをやろう」と提案し、数人で缶蹴りをすることになりました。


缶蹴りに夢中になっていると、遅れてきた同学年の友人が、まだ幼稚園の弟を連れてやってきました。「親が家にいないから、仕方なく連れてきた」とのこと。


まだ幼稚園の子には缶蹴りのルールの理解を正しく理解できそうにもなく、小学生の子供たちは困り果て、みんなで話し合います。


みんなで楽しく遊べるルールを考えようか、それとも違う遊びにしようか…

お気づきの方もいると思いますが、予定調和のない場面においての対応力、正解のない問題に対して答えを探す問題発見・解決力、夢中になって遊ぶフロー体験、同じ条件の遊びが出来ない子どもと遊ぶことでの多様性、一から遊びのアイディアを創造するクリエイティビティが発揮される場面に他なりません。


海、川、山、森など大自然のなかではさらに様々な予測不能なことが起きるでしょう。


遊びは大人になってから求められるさまざまな能力とつながっています。


遊びの舞台が近年では家庭の事情や安全面から、スマホやタブレットを使ったアプリゲームの世界に移行していますが、いささか心配な面もあります。

先述の遊びによる問題発見・解決力や多様性をリアルなコミュニケーションのなかで経験してこないと、学校で課される「正解のある問題」を解くことには困らないかもしれませんが、社会に出てから必要となる「正解のない問題」を解く力が充分に培われないかもしれません。


しかし私たちが生きる現代は言わずもがな、予測困難で「正解のない問題」ばかり


バーチャルな世界の遊びはITリテラシーに貢献しますし、ゲーム内容によっては創造性も培われ、フロー状態にもなりますので悪いとは思いません。


しかし、他者に作られた世界で、予定調和のなか創造性を発揮する経験が少ないことについては気になります。

個人的見解ですが、「勉強ができるのに仕事ができない人がなぜ生まれるか問題」はここに通じると思っています。


小さいころからの受験勉強。休みのない習い事。進学校から有名大学。そして大企業への就職と華々しいキャリア。一見すると多様な経験をし成長していそうですが、遊びのバリエーションの偏りからバラつきのある発達をしてもおかしくありません。




仕事に”遊び”を取り入れる


一昔前までは、仕事は仕事、遊びは遊びと区別していましたが、今や違います。


時代を象徴する活躍と先見性をもつ堀江貴文氏と落合陽一氏の対談によって書かれた共著『10年後の仕事図鑑』でも書かれていますが、これからはあらゆる分野にAIやロボットが入ることで仕事は激変し、仕事の価値も変わります。


10年後の仕事図鑑(SBクリエイティブ)

重労働と呼ばれる仕事、人が集まらない不人気な仕事、ロボットがやった方がコストが安い仕事、AIがやった方が正確で効率の良い仕事…現在する仕事のかなりの部分が影響を受けることは間違いないといえます。


堀江氏も指摘しますが、「好きなことを極めればそれ自体が仕事になる」ということは、先述の遊びの本質とフロー、創造性にも通じます。


生活のために仕方なくやりたくないことを仕事にしている人は、フロー状態もなく創造性も低下します。恐らく生産性もそう高くはないでしょう。


そうした人の仕事こそ真っ先にAIに代替されていくことは自明です。


そんな人が「行為自体が好きで好きでたまらなくて、集中してひたすら続けられ、遊びのように楽しんで取り組んでいる創造性に富んだ人」に勝てる訳がありません。


「お金がないと生活できないでしょ?」というみなさんも、前提を変えた方がいいかもしれません。


やりたくないことをいやいや続けるのではなく、好きなことを全力で楽しみ、遊びのように没頭して続けられること自体がこれからは価値になります。


本書でも紹介されていた例ですが、100m走の選手でオリンピック金メダリスト・ウサイン・ボルトは人類最速のアスリートです。彼は100mを9秒台で走れますが、それ自体は経済や人類の発展には直接寄与しません


しかし、こうした誰にも真似できないくらい究められることが人々の感動や驚き、共感を呼びさまざまな方面から声がかかり、それ自体もお金に換えられる価値になる訳です。

YouTubeを使って自分の好きなことを配信し、生活するユーチューバーも同様ですね。


そして、こうした分野をいくつか持ち、組み合わせられる人はオリンピックの金メダリストのように100万に1人の存在となり、唯一無二の存在になっていくことで、AIにも代替されにくい存在になっていくのではないでしょうか。



これからは勉強も仕事も遊びの感覚が大切

英語の「school」という単語は、ギリシャ語で「楽しみ」を意味する言葉から生まれたそうです。


しかし今の教育現場を見ていると、創造性を支える楽しみに満ち溢れた場には見えません


遊びはくだらないと勉強と遊びと分けるような価値観がありますが、これは間違っていると思っています。冒頭にお話した「真面目と楽しさの両立」は、学校現場でももっと取り入れられるはずです。


これからは勉強も仕事も、「遊びの本質」を理解し、遊びのように行為自体に集中し続けられるものを見つけていきたいですね。


かくいう私は、お陰様で仕事をするに遊び、遊びのように仕事をさせてもらっています。学ぶことも遊びになっています。

結局何が言いたいかというと、「もっと遊び上手になりましょう!」ということでした。

老いも若きも、もっと遊ぶように生きられる日本になってほしいものです。

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山本一輝


Idea partners


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